先日テレビを見ていると、ダンサーの香瑠鼓(かおるこ)という方の半生にスポットを当てた番組を放送していました。
香瑠鼓という人を私は初めて知ったのですが、ラッキー池田や南流石といった日本を代表する振付師と一緒にユニットを組んで活動をしていた方で、
有名なところでは80年代に一世を風靡したアイドルユニットのWink(わかりますよね…?(^_^;))の振り付けなどを担当された方だそうです。
さてさて、その香瑠鼓さんのエピソードで非常に興味深いなと思ったのは、
この方が幼稚園で不登園になってる点です。
インタビューでは「周りが幼稚すぎて、合わせるのが辛かった」というような意味のことをおっしゃっていました。
お遊戯の踊りでも子供らしいかわいい踊りを求められるけど、自分は身体の見せ方や細かい顔の角度まで意識していた。
でも当然そんなところを褒めてくれる先生もおらず、面白くなかったと。
そして、大の引っ込み思案で内向的で、自分のことを全く発言できない子供だったと言います。
香瑠鼓さんの妹さんが言うには、
幼稚園くらいの時に部屋で転んで、その後あまりに何も言わずにじっっとしているので両親が心配して病院に連れて行ったら、骨にヒビが入っていたそうです。
幼稚園児なのに、骨にヒビが入るような痛みがあっても、それを表現することをしなかったのです。
それほど超引っ込み思案な子供だったのです。
ですが、小学生になってから転機が訪れます。
テレビで流れていた山本リンダの歌と踊りに衝撃を受けて、それを真似てみたくなったそうです。
そして家で1人でその踊りを練習していると、今度はどうしても誰かに見てもらいたくなってきた。
そこで学校のクラスメイト達に踊りを披露して、拍手喝采を得たと言います。
超引っ込み思案で自分のことを全く表現できなかった子が、学校の友だちの前で山本リンダを踊ったのです。
そしてそこから彼女の快進撃は始まります。
高校でもダンスに熱中し、パフォーマンス集団を主宰したり、精力的に活動の場を広げて行ったそうです。
インタビューで香瑠鼓さん本人は「私は120歳まで踊るつもりですから」と呆れるくらいポジティブに語っておられました。
改めて考えてみると凄いことですよね。
幼稚園に行かなくなるような「超」がつくほど引っ込み思案な子が、クラスの友達の前で山本リンダを踊る。
そしてパフォーマンス集団を主宰する。会社を経営する。120歳まで踊ると言う。
なんという変わり様でしょうか。
でも、私はこの香瑠鼓さんの半生に触れて、驚きというよりもどこか既視感に似たものを感じずにはいられませんでした。
そうそう、人生ってそういうものだよな。こういうのをたくさん見てきた気がするな…と、そう思ったのです。
そうなのです。
これは多くの人に起こりうる人生のひな形です。
『みにくいアヒルの子』という童話が教えている人生の形であり、
先日このブログに書いた「あなたの中の異物について」というお話のその後の物語であり、
多くの人の人生に起こりうる1つのパターンなのです。
事実、これを書いている私の人生にも、形は違えど同じことが起こりました。
なぜか惹かれる分野を心惹かれるままに探求して訓練を繰り返した結果、どうしても表現したくなり、与えたくなり、その結果、今の仕事があります。
そしてそれに熱中する中で、自分の欠点や弱点であった部分は問題ではなくなって行きました。
ですが、その力が開花して世の中に価値として流通するまでは、それはむしろ苦しみを生むような力でした。
香瑠鼓さんも、幼稚園へ行けなくなるような「大人びた自意識」という異物を持っていました。
でもそれを否定せずに、ダンスという衝動へと開放することで、その自意識は振付師として、観客を意識する批評眼へと昇華し、他との違いを生み出す力となって行ったわけです。
そして、今回特に強調したかったのは山本リンダのダンスが与えた力についてです。
私達は、ほとんどの場合、登園できないことや引っ込み思案を直す方向に意識を向けてしまい勝ちです。
それは社会の標準に自分を合わせて、自分を直そう(平準化しよう)とする努力です。
ですが、実際に香瑠鼓さんに起こったことを見ると、山本リンダのダンスを夢中で修得することを通じて、生きる力につながり、「人に見せたくて仕方がない」という衝動が内側から溢れ、
その結果、引っ込み思案を無くす意図もなく、引っ込み思案を消失させてしまったのです。
外側に合わせようとして変わったのではなく、内側の衝動に従った結果として変わった(社会化された)わけです。
多くのクライアントさんの人生を見ていると、これと同じようなことが起こっています。
自分の内側が求めているものに従うことで、悩みが悩みではなく、個性となり才能となり社会に求められていく。
どうやら人生はこのようにできているようです。
しかし注意も必要です。
内側が求めているものは、外側のコマーシャルによって植え付けられた誰かの意図ではないか。誰かの欲望の転移ではないか。
そこを見ることが大切です。
そして、それを確認する方法は1つしかありません。
つまり、
実際にやってみること。
内側から溢れてくる力の強さを問うこと。
それに尽きます。
どうやらこの人生は、やってみること、行動してみることを通じて自分を知るように出来ているようです。
いろいろやってみること。失敗してそこから自分を知ること。それはあなたに与えられた権利です。
いろいろ試してみてくださいね。
たくさん失敗してください。
とにかく体験の量を増やしてください。
やる前に賢くなってしまうことに警戒してください。
あなたにとって、山本リンダのダンスとなるものは何でしょうか?
内側の衝動を掻き立てる活動とはどんなものでしょうか?
私達の内側は、本当の自分を開花させないまま醜いアヒルとしてこの人生を終わらせたくは無いのです。
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以上です。
梅雨みたいな春が、早く朗らかな春になりますように。